全く言葉の分からない外国に独り迷い込んだ状態
簡単な事を言うと失語症とは、脳に言葉を話すことや理解する機能の言語中枢があり、その部分が脳卒中や脳挫傷などが原因で、言語中枢にダメージが加わり、言語機能(話す、聞く、書く、読む等)が困難になった障がいです。
よく「全く言葉の分からない外国に独り迷い込んだ状態」に例える場合があります。仮に言葉の分からない外国に行った時に下記の通りになり会話が困難です。
- 人とは言葉が通じません
- 相手が何を言っているのかわかりません
- 相手に伝えたい事があるのだが現地語を書くのは出来ません
- ポスターや看板なので”それが文字だ”と言うのは分かるのですが何を書いているのか理解する事は出来ません
失語症になっても視力や聴力等には問題がないのですが、言葉にする手段が上手く行かないのです。
但し、ちゃんと耳から聞こえているのですが、「言葉の意味がわからない」とか「長い言葉がわからない」等、聴力は正常なのですが、理解する力が問題なのが多いです。
これは、別の高次脳機能障害と重なっている事が多いので、判断が難しいです。
失語の6つの基準規定
失語とは何か、という問いに答えることはそう容易ではない。失語は次の6つの基準で規定される。
- 成人の後天的障がいである
- 脳の器質的損傷に起因する
- 話す、聞く、読む、書くの4つの言語様態のすべてに及ぶ言語障がいである
- その言語障がいが、要素的な神経障がいでも、全般的な精神障がいでも、他の神経心理学的障がいによっても説明できない
- その障がいが、音韻論、語彙論、統辞論、意味論などの言語学の種々の水準でも記述可能である
- 発声、構音、言語というように広義の言語を3つの水準に分けた場合には、言語の水準の障がいである
出典:言語聴覚士のための失語症学
医歯薬出版
波多野和夫、中村 光、道関京子、横張琴子 著
スピーチチェーン
”話し手”から”聞き手”へのメッセージの伝達過程のどこかに障がいが生じると、話し言葉によるコミュニケーションの障がいが起こる
出典:話しことばの科学-その物理学と生理学-
東京大学出版会
エリオット・N.ピンソン (著), 神山 五郎, 戸塚 元吉 (翻訳)
スピーチチェーンを簡単に書くと
- 言語学的段階(話し手)
何か話したいことが頭に浮かぶ - 生理学的段階(話し手)
それを脳の中で言葉にする
音響学的段階(話し手/聞き手)
発声する / 発声された音を耳に入れる - 生理学的段階(聞き手)
音が脳の中に入る - 言語学的段階(聞き手)
音の意味を理解する
失語症のタイプ
- ブローカ失語(運動性失語症)
言葉は理解できるんですが、イメージが言葉になる過程で障がいがおこるため、文の構造をうまく組み立てられず、単語や短文でしか言葉が出てこないんで、ぎこちない話し方になります - ウェルニッケ失語(感覚性失語症)
聞いていて言葉の理解が困難で会話が成立しないことがあります。話す方は、なめらかに話すことが出来ますが意味の通らない言葉を話します - 健忘失語(失名詞失語症)
軽度の失語症で、聞いて理解することは出来るのに物の名前が出てこないため、回りくどい話し方が多くなります - 全失語症
聞く、話す、読む、書く等のすべての言語機能が困難になった状態で、重度の障がいです